話には順番というものがあって、小池氏が圧勝の理由とか今の状況とかを説明しないと、今からどうなるのか(あるいはどうしたらいいのか)はちょっと話しにくいです。
というわけで、小池百合子氏のことはもう1回だけ待っていただいて、今回は増田氏(自公推薦)がなぜ敗れたか、ということを見ていきたいと思います。
ただ、前回の民進党とちがい、自民党は小池氏との関係も深いので、自民党の体質や敗因を語る事により、小池氏のことにもだいぶ近づけることでしょう。
【活躍運でみる都知事選】その2
衝撃! 小池氏も増田氏も運気は、さほど差がない!!!
明暗を分けたのは、石原氏・森氏・自民党東京都連のアシスト!?
増田氏の活躍運を見る前に、まずは比較のために小池百合子氏の活躍運を見てもらいたいと思います。
【(1)小池百合子氏の活躍運】
小池百合子氏の活躍運を見ますと、1980年ごろから2019年ごろが旬(=人生における活躍できる時期)となっています。良く言えば息が長いというわけですが、大きな山がなく、強烈な印象を残すぐらい活躍できる時期がないともいえるかもしれません。
なお、2016年現在での活躍運は約1.4目盛りで、決して高いわけではありません。
それでは次に、増田氏の活躍運を見てみましょう。
【(2)増田氏の活躍運】
増田氏の2016年現在の活躍運は1.3目盛りで、小池氏とあまりかわらない値です。
さらに運気以外の面では、官僚→岩手県知事→総務大臣といった(小池氏ほどでないにせよ)華々しい経歴をお持ちであり、それに自民党と公明党の組織力が加われば、小池氏と互角か、むしろ有利なぐらいと見積もれます。
それなのになぜ、増田氏は、惜敗どころか完敗してしまったのでしょうか?
以下にその敗因をあげてみたいと思います。
【敗因考察】
以下の増田氏への3つのアシストが
小池氏を後押しになった可能性アリ
お二方の活躍運にはさほど大きな差異は見られませんでした。では、なぜ小池氏の圧勝となったのでしょう。敗因は以下の増田氏への応援に関した3点にあるのかもしれません。
①石原慎太郎の応援
②森喜朗氏の応援
③自民党東京都連のアシスト
それぞれを細かく見ていきましょう。
<<①石原慎太郎の応援について>>
まず、すでに多くのメディア等で指摘されていることですが、石原慎太郎氏が小池百合子氏のことを「大年増の厚化粧」と言って批判した、というのがあります。(7月26日、増田氏の決起大会にて)
「その女性蔑視ととれる発言に、世の女性たちが憤慨し、女性票がどっと増田氏から小池氏に流れた」、みたいな解説もありますが、それはあまりにも浅はかな見方でしょう。
というのも、確かに品のない悪口ではありますが、女性蔑視と言うよりは小池氏個人に対する悪口であることは明らかですし、そもそも「厚化粧」という表現も、有名な文学賞まで受賞したことのある石原氏の言葉ですから、
「政界の渡り鳥」
(数々の有力者にすり寄り利用しては乗り換えてきたという意味)
の異名を持つ小池氏に対して「厚顔無恥」という含み
があったと捉えるべきでしょう。
なお、この悪口に対しての小池氏の返答は「顔にあざがあるから化粧が濃いのです。」みたいな、味もそっけもないものだったそうですが、それに対して石原氏が「じゃあ、すねにもたくさん塗ってるのか? 生傷が絶えなそうだし。」、「顔のあざは振った男から殴られたからか? 相手の男の名は、ホソカワか、それともオザワ? モリ? アベ? あるいはもっと他の男か? それともひょっとして全員?」、みたいに言い返したかどうかはよく知りません。
実際、小池氏に女性票があったとは
考えにくい状況
上記した印象は男性のみが持つものではありませんでした。小池氏に対しては、女性の側からも「あのように、権力者にこびへつらうことで自分の価値を高めようとする(古い考え方の)女こそ、まっとうに実力で勝負したいと思っている女性の足を引っ張るのだ。あれこそ女の敵だ!」みたいな批判が、従来から根強くあります。
(小池氏を批判するのが本コラムの目的ではないので、いちおう擁護しておきますと、小池氏の世代や時代では、女性の社会進出に対する反感は今よりももっと強く、
実力を見せるだけでは上には行けなかったという事情は考慮すべき
でしょう。)
そういうことを考慮すれば、この石原氏の発言で、女性が憤慨してこぞって小池氏を応援したので圧勝となったというストーリーはわかりやすいけど無理があるでしょう。
活躍運を見ると石原氏が逆風を
呼び込む可能性が!!
ただ、一方で、この発言が広く報道されたことによって石原氏が目立ってしまったことは、増田氏陣営にとって大きなダメージとなったと思います。
というのも、前回、鳥越氏の話題で書いたとおり、「今、活躍運がない人が社会を動かそうとしても、言うことなど聞いてもらえず、むしろ逆効果となる」からです。
ちなみに、石原慎太郎氏の今の活躍運はどうなのか、と計算してみると以下の通り。
【石原慎太郎氏の活躍運】
石原氏は2002年ごろから旬を過ぎて活躍運が下がっています。それでも、2010年ごろまでは過去のネームバリューもあっていろいろ活躍されていましたが、さすがに最近は高齢もあって、覇気や勢いが衰えられた感じがします。
で、今の活躍運は0.2目盛りぐらいの最低ランク、この状態で社会を動かそうとしても「お前はもう引っ込んでろ!」と反発を受けて、逆効果になりますし、なまじ有名人であるためにそれが大きなダメージになります。
発言は氷山の一角
問題は別の部分
ですから、先程の厚化粧の発言が女性蔑視であろうとなかろうと、あるいはもっとやわらかな表現で、対象を小池氏に限定して批判したとしても(例えば「百合って、花言葉は、“純潔”なんだけどね、」みたいに)、増田氏の背後に石原氏がいて都政を操ろうとしている(ようにみえた)こと自体が、老若男女問わず(増田氏への)嫌悪感と反発を引き起こすことになり、小池氏への大きなアシストとなったわけです。
一昔前は、東京都知事として絶大なる支持率を集めていた石原氏が、今は嫌われて都知事選にとってマイナス要因にしかならないとは、少しかわいそうな気もしますが、それが運気がかわったということであり、現実というものです。
石原氏の立場に立つならば、今はあまりあからさまに自らが社会を動かそうとか、社会に対して働きかけようとする姿を見せない方がいいのでしょう。
<<②森喜朗氏の応援について>>
その石原氏以上に、今回の都知事選で小池氏へのアシストを決めていたと考えられるのが森喜朗氏(元首相)です。
【森元首相の活躍運】
森氏の活躍運も、2007年以降は低迷しており、社会に影響を与えられる側どころか、国民から「もう貴方は活躍しなくていいから隠居してほしい」と思われる側の人となっています。
ついこの間のことですが、新国立競技場(2020年オリンピックの会場となる)のデザイン見直しについて、A案とB案が拮抗していた時に、森氏が「僕はB案が良いと思うね」と発言したら、その後スムーズにA案に決まってしまったことがありました。(2015年12月)
そのように、「森氏が言った方の逆に社会がまとまる」というのは既に最近の常識でして、当時も「森氏に決定権はないものの、その発言による(負の)影響力が懸念される」という関係者の声がニュースで紹介されていましたし、ビートたけし氏からは「森氏は本心ではA案にしたかったから、わざとB案が良いといったのではないか」とまで言われる始末。
まさに森氏は社会のまとめ役というか、国民的関心事のキャスティングボードを握っていると言っても過言ではありません(ただしマイナスの)。
「意図的に行ったのでは」と思えるほどの
ナイスアシストっぷりを発揮
そんな森氏が、都知事選の準備段階から小池氏の立候補に反対し繰り返し批判したものですから、小池氏にとって大きな追い風となったことは明確!
しかもさらにご丁寧に、小池氏は公約に「オリンピック費用の見直し」なんて入れたために、選挙中になっても森氏の存在や発言が注目されるようになったわけで、もしこれが狙ってやったとしたら、賢いというよりも、冷酷というかえげつないですね。だって、袂を分かったとはいえ、かつてのボスをそんなふうにして罠にはめて利用したわけですから。まあ、女性が知名度を上げて活躍するには、そういうのも必要なのだとは思いますけど。
あるいは、ビートたけし氏が指摘したように、森氏は自分が反発を受けることをわかっていて、あえてそうしたのかもしれません。そうすることにより元子分の小池氏に恩を売ると同時に、小池氏にも増田氏にも自分の影響力を保持できるわけですから。
もし、そういうことなら、私の今回のコラムについても、是非とも森氏に名指しで批判してもらいたいものですね。
<<③自民党東京都連のアシスト>>
他にも、小池氏圧勝の立役者として欠かせないのが、自民党東京都連です。選挙期間全般を通して、いろいろ批判の対象になってましたが、特に「議員の親族が非推薦議員を応援したら、その議員を処分する」なんて通知文書を発行した行為が有名です。
おかげ世の中の大顰蹙を買って、今まで都連の存在なんかよく知らなかった人にも、「増田氏に投票したら大変なことになる」と危機感を抱かせることになりましたし、自民党支持者にすら「こりゃあかんわ!」とあきれられて、小池氏への投票を促すことになりました。
参考までに、この文書を出したといわれる内田茂都連幹事長という方の活躍運を載せておきます。
この内田氏という方のこれまでの実績や評価については、よく知りませんし本稿の目的でもありませんので、他の論者などに任せることとします。ただ言えることは、現在の活躍運の低さでは、何か世の中に呼びかけて動かそうとしたりしても、逆効果になるということです。
これが10年以上前であれば、あの文書もまた違った効果を発揮したことでしょう。
【まとめ】
こうして、本来だったら、小池氏と互角かそれ以上の戦いをできるはずだった増田氏が、石原氏、森氏、そして自民党東京都連などの熱き支援をうけたおかげで、みごとに出遅れてしまい、その後も支持率が伸び悩むことになりました。あとは鳥越氏の自滅も加わって、小池氏の圧勝になったわけですね。
言い換えれば、増田氏の応援に回った人たちがそろいもそろって運の悪い人たちであったというのが増田氏(そして自民党の)敗因だったわけですが、そのような人たちも、ひと昔かふた昔前は、泣く子も黙るような、社会を動かすことのできるお方であったことは間違いなく、これも時代が変わったということですかね。
増田氏としては、石原氏や森氏、都連の人たちに「とにかく何もやってくれるな、極力目立たないようにして、何も発言しないでくれ」と言っておくべきだったでしょうし(それが可能かどうかは知りませんが)、それよりも神輿に担がれる前に(とくにケンカ神輿の場合には)担ぎ手をよく見さだめることが必要だったのかもしれません。
☆小池氏の圧勝と増田氏の敗因☆
増田氏の応援に回った人たちが、みな旬を過ぎていたこと。これに尽きる。
次回はいよいよ、小池氏が今後どうなるか、あるいはどうすればよいかについて、論ずることにしたいとおもいます。それではまた。
(【活躍運で見る都知事選】☆その3☆に続く)